仕事と生活(2)

Sidの海外紀行

 今回はオーストラリア人と仕事をして気が付いた事の中で、彼らの出張報告を中心に書いてみたい。
 私の赴任した会社は日本の親会社から研究開発委託を請け負い、その成果物で収入を得ている。従って親会社とは人的交流も多い。交流方法は電子メール、 TV会議、出張等がある。交流のための言語は英語で行われる。TV会議の際は、オーストラリア側の誰かが通訳を兼任しながら仕事の会話を進める。出張では 基本的に直接関係者が顔をあわせ英語で話し合いをおこなう。オーストラリア人はごく一部の人を除き、基本的に日本語が全く解らないし勉強をしようという考 え方も無い。日本人が英語を喋るのが当たり前と考えている。しかし、日本人が英語で喋れば、多少文法、発音が悪くても理解しようと最大限の努力をしてくれ る。親会社と交流をするメンバーはオーストラリア側の研究開発技術者で、親会社の技術者と会話するのが殆どである。このような背景で、いろいろ面白い行き 違いを経験した。
 その1:親会社側の日本人は日本人固有の性格から中々物事をはっきり言わない。反対にオーストラリア人は自分達に都合が良いように物事をとらえる明るい 性格で(悪気が無く)、この両者の国民性の違いからビジネスで大きな食い違いが生じることがある。あるプロジェクトを親会社とオーストラリアの研究開発会 社が共同で仕事を進めていて、次の段階を検討するためにオーストラリア側からオーストラリア人3名の技術者が親会社に出張し、会議をし帰国した。そこで帰 国後彼らの出張報告を聞き、結果的にはオーストラリア側の希望通り次の段階に進む事になったと報告を受けた。
 しかし、報告を受けてから暫くして、親会社から私に電話が入り今回の会議の概要報告を受けた。その話によると結果は全く逆で、親会社はこの開発プロジェ クトを暫く止めて、市場の反応を見てからどう進めるか、結論を出したいと考えていた。しかし親会社の技術者はオーストラリア人が次の計画を熱心に喋るの で、あまり反論も出し難く、物事をはっきり言わず、言ったのはどうも”検討しておく”と言っただけで、”暫く中断したい”と明確に言わなかったようだ。 オーストラリア人はこれを、興味があり前向きに進めると思い、会議は成功だったと私に報告した。親会社の連中は、真意はむしろプロジェクトを一時中断した い意向であると私に言う。私は親会社の連中に物事をはっきり言わないから誤解を生むのだと言ったが、そこを何とか現地技術者に真意を私から説明してくれと 言うのである。我々親会社からの駐在員は親会社と現地会社との間でいつもサンドイッチ状態になることが多い。
 オーストラリア人も報告は良いことだけで、悪いことはなかなか報告しない。私が5年間駐在して、彼等から悪い報告を受けたことが無い。この辺が怖いとこ ろで、いつも会議では何か悪い報告は無かったのかと聞く癖が付き、彼らは私にいつもオーストラリア人の報告を疑い、信用しない、心配しすぎだとよく言って 来た。
 オーストラリア人の伝統的な明るさと大雑把な性格、日本人は特に外国人に良い事ばかり言い、本音を言わず気を使いすぎ、神経質な性格の違いから、駐在者 はこの板ばさみになる事も多い、が同時に両国の国民性の違いを実感でき面白い実経験が得られる。これは現場の技術者だけでなく、親会社の役員クラスも同じ だ。
 その2 親会社の役員、上級管理職が親会社の方針を海外研究開発会社の現地人社員にも説明する機会が年に1度程度ある。これは良い習慣で誇りにしている 部分である。しかし、たまにこれらお偉い方々の説明が抽象的で、具体性が無く、更には本当に解って喋っているのか疑いたくなる演説もある。日本人が日本語 で聞いても理解に苦しむ内容が多くある。そこは伝統的日本文化で、日本人は誰しもが有り難く聞き入って、誰も質問など恐れ多くてしない。しかし、我々日本 からの駐在者は帰国後、現地人からお偉いさんの説明内容がわからないから説明してくれと言われる。これが私の最も苦手とするところだ。本音では俺も解って いないと言いたいのだが、そこは根性が日本人でハッキリ言えない性質。そこで、彼らは解っているのに教えないと文句を言う。私はその役員で無いから、次回 に行った時に直接聞けと言う。しかし、現地人はこれを真に受け、次回の出張の際にこの役員に聞いた。しかし、かの役員曰く、”お前が良く説明しておけ”で 再び振り出しに戻ってきた。オーストラリア人の無邪気な?素直さ、日本人の曖昧さにダブルショックを受ける羽目となった。

Picnic Day

親会社の食堂で
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